嵐の歓迎式典で
皇室外交の際、訪問先となる国では盛大に歓迎式典が執り行われます。平成17年(2005年)に訪ねられたノルウェーにおいてもそうでした。
しかし、ひとつだけ従来の歓迎式典と異なる点がありました。
酷い荒天だったのです。
▲左からソニア王妃、皇后陛下、今上陛下、ホーコン王太子、メッテ・マーリット王太子妃
5月10日、今上陛下と皇后陛下は先にご訪問されたアイルランドをお発ちになり、ノルウェーの首都オスロにあるガルデモーエン空港に到着されます。 王宮前広場での歓迎式典に臨まれる両陛下でしたが、あいにく天候はびっくりするくらいの土砂降り。しかも雹まで混じる始末。
王宮前に御車が入り、式典が始まりました。儀仗兵(ぎじょうへい・元首を警備する兵)から栄誉礼を受ける儀式のため、今上陛下はずぶぬれになりながら歩かれます。
陛下に傘をさすのを忘れていたSPが慌てて駆け寄るハプニングもありました。
その間、皇后陛下はソニア王妃、メッテ・マーリット王太子妃とともに儀式の進行を見守られていたのですが、3人とも当然雨や雹に打たれたのでびしょ濡れ。しかもそこは仮造りの小さな屋根だけのパビリオン。横から吹きつける風雨は容赦ありません。
寒さにこごえるメッテ・マーリット王太子妃に手をのばし、かばうようにされた皇后陛下のお姿はノルウェー全国に報道され、大きな反響を呼びました。
▲メッテ・マーリット王太子妃をかばう皇后陛下(中央)。床が白いのは雹のせい
それもそのはずです。メッテ・マーリット王太子妃はこのとき妊娠されていたのです。(この年の12月にスヴェレ・マグヌス王子を出産されます)
さらに今回の両陛下の歓迎式典の公式責任者も王太子妃。おまけに初めての公式責任者としての公務となり、プレッシャーも大きかったと思われます。
▲さりげない優しさに惹かれます
その重荷と身重の身体をいたわる皇后陛下の御手に、多くのノルウェー人が日本と皇室に親しみを感じたといいます。
皇后陛下の優しい御手といえば、左のショット。今上陛下の肩の雨しぶきをさりげなく払っていらっしゃるのも、ほっこりさせられますね。
参考:宮内庁(http://www.kunaicho.go.jp/)
株式会社JDN(http://www.japandesign.jp/HTM/REPORT/norway/)
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