皇后陛下のエピソード

瞬時の判断

皇后陛下

今上陛下と皇后陛下は全国津々浦々、行幸されます。ご訪問先では大歓迎を受けるわけですが、日本全国1億2千万もの人口を抱えれば、当然いろんな考えの人がいるもので、行幸をおもしろくなく感じる人も中にはいるわけです。

場合によっては強硬な手段で反対の意を示す者もいます。憲法第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とありますから、何を考えようがそれは各人の自由なのですが、法に反してでもその意思を具現化しようとすることもあります。

無論、行幸先では警備がつくわけですが、その目をかいくぐって過激な抗議が行われたことも実際には何度かありました。
そのとっさの折、事態に遭遇された両陛下はどのような行動をお取りになったのでしょうか。


第47回国民体育大会開会式にて ▲第47回国民体育大会山形大会の開会式にて

平成4年(1992年)に山形県で行われた第47回国民体育大会(山形べにばな国体)、開会式でのことです。開会のお言葉を述べられる今上陛下、その隣には皇后陛下がお立ちになられています。

そこへ突然、競技場内のトラックから男が駆け寄り、「天皇訪中反対」「天皇は帰れ」などと叫びながら両陛下のいらっしゃるロイヤルボックスに向かって発煙筒を投げつける事件が発生しました。(当月に両陛下には中国ご訪問のご予定がありました)

男が動き始めたそのとき、皇后陛下はすぐさま異変を察知されます。

異変を察知された皇后陛下

そして一瞬のご判断で、皇后陛下は一切の躊躇なく右手を今上陛下の前へ伸ばして、陛下を庇われたのです。

今上陛下を身を挺してお庇いになる皇后陛下

幸いなことに発煙筒が両陛下の近くまで届くことはなく、今上陛下のお言葉が中断することはありませんでした。
事態が大事に至らないとご判断された皇后陛下は、すぐにお手を下ろし、何事もなかったかのように元のご姿勢に戻られます。

大事に至らないとご判断されて姿勢を戻された皇后陛下

皇后陛下が異変にお気づきになってから、右手をお伸ばしになり、元のご姿勢に戻られるまでの時間はなんとわずか4秒。一瞬での的確なご判断と、それを実際に行動に移すご瞬発さ、さらには開会式の場を騒動にしてしまうことなく、すぐに平時の微笑をお湛えになる平常心、どれをとってみても感服の極みです。

今上陛下もまた、お手元の文面をお読みになりつつも、視線を前方へ向けたりされていたので、暴漢の登場にはお気づきになっていたのかもしれません。しかし、何ら動揺されたご様子をお見せになることもなく、粛々とお述べになり続けておられました。

    

あとにもさきにも、このようなことはこのとき限りと思いきや、実はさらに時を遡り、今上陛下が皇太子だったころにも、命を狙われる事件があったのです。

昭和50年(1975年)、沖縄でのことです。この年に開催された沖縄海洋博覧会にご出席のため、皇太子殿下と妃殿下(当時)沖縄県に初めてお入りになります。これは終戦後初の皇族による沖縄行幸啓ということもあり、来沖に反対する過激派による抗議活動が懸念されていました。

糸満市にあるひめゆりの塔に慰霊に向かわれた両殿下。献花台に花を手向け、案内役のひめゆり同窓会の源ゆき子氏の説明を熱心にお聞きになっていたそのとき…
「ひめゆりの壕」内に潜んでいた過激派が至近距離の殿下へ向けて火炎瓶を投擲。幸いにも殿下に直撃することはなく、献花台に当たり炎上しました。

両殿下に向けて火炎瓶を投げる過激派
▲両殿下に向けて火炎瓶を投げようとする過激派
画像引用:さくらの花びらの「日本人よ、誇りを持とう」
(http://blogs.yahoo.co.jp/bonbori098/)

当時の警備責任者であった警察庁警備局警備課長佐々淳行(さっさあつゆき)氏は現場で全てを見ていたうちのひとり。火炎瓶が投げられた瞬間、妃殿下が皇太子殿下の前にサッと半歩お進みになり、やはり片手を殿下の前に伸ばし、身を挺して守ろうとされたのを目撃されていました。そのあとすぐ警護の警官に囲まれて両殿下は避難されますが、妃殿下はその際に打撲を負ってしまわれます。

この沖縄行啓は妃殿下のご不例(体調不良)の身をおして実現したものでした。炎天下の沖縄で芳しくないご体調のなか、それでも6か所の戦跡をお巡りになられ、暴漢に襲われる事態にまで及んだにもかかわらず、妃殿下はひとことの不平をもお漏らしになることすらなかったといいます。

参考:wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%82%81%E3%
82%86%E3%82%8A%E3%81%AE%E5%A1%94%E4%BA%8B%E4%BB%B6)
ワック・マガジンズ 歴史通 2011年5月号 佐々淳行「天皇―最高の危機管理機構」


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