皇后陛下のエピソード

サインは彼のもの

皇后陛下

平成22年(2010年)の大きな話題と言えば、南アフリカ共和国で開催された2010FIFAワールドカップでした。善戦の末、グループEで2位進出を決めた日本。予選を突破し、ついにベスト16入りを果たします。


予選突破を喜ぶ日本イレブン
▲予選突破を喜ぶ日本イレブン
画像引用:時事通信社

南アフリカの首都プレトリアで行われたラウンド16パラグアイ戦。日本・パラグアイともに初のベスト8入りを懸けた試合は、双方一歩も引かず、ついに決着はPK戦に持ちこされました。

PKはパラグアイの先攻。E・バレト、バリオス、リベロス、アエドバルデス、カルドソと5人全員が成功します。こうなるともうあとがない日本。一人目遠藤保仁、二人目長谷部誠までは成功したものの、次いで三人目となった駒野友一(こまのゆういち)のボールがクロスバーに嫌われて失敗してしまいました。日本のベスト8入りの夢は、ここに敢え無く散ってしまいます。

ボールが少し上に行ったかとは感じたものの、ミスキックをしたわけではなかった駒野。それでもPKは外れてしまい、チームは敗者となってしまいました。岡田武史監督や仲間は駒野選手を励ましますが、どうしても彼は自分を責めてしまい、涙が止まらなかったのだそうです。

そして10日後のことです。日本に帰国したチームから岡田武史監督、主将の川口能活選手、ゲームでキャプテンマークを付けた長谷部誠選手、日本サッカー協会の犬飼基昭会長の4名が皇居へ招かれました。

会見に臨む4名
▲天皇皇后両陛下と面会した川口選手、長谷部選手、岡田監督、 犬飼日本サッカー協会会長(左から)
画像引用:共同通信社

天皇皇后両陛下とのご懇談では、両陛下から「ご苦労さまでした。お帰りなさい。画面を通してもチームが一つになって、日本人として戦ってくださった」とのねぎらいのお言葉を賜ったのだとか。

それもそのはず。放送時間が深夜帯に及ぶにも関わらず、両陛下はほとんどの日本戦をTVの生中継でご覧になっておられたのです。

チーム全員のサイン入りユニフォーム
▲全員のサインが入ったユニフォーム
(画像引用:サンスポ
http://www.sanspo.com/)

デンマーク戦のあった6月25日。皇后陛下は試合が始まる午前3時半にお目ざめになられました。するとやはり今上陛下もお目を覚ましていらっしゃり、「見るか?」と尋ねられて両陛下そろって観戦されたのだそう。
長谷部選手は「ライブで見ていただいて非常に感動しました」「両陛下は、非常にサッカーにお詳しかった」と会見で述べています。

また、4名から両陛下へは、日本代表の全員分のサイン入りユニフォームが贈られました。それらを眺めながら皇后陛下が「中沢選手のサインはどれですか」とご質問を投げかけると、選手のサインを覚えていなかった岡田監督は「私のは分かるのですが…」と回答に窮する場面も。

さらに皇后陛下は、ひとつひとつご覧になり、「これは駒野さんのね」とサインを言い当てになられます。

自筆サインを持つ駒野選手
▲2012Jリーグキックオフカンファレンス
にて今季の目標を書いたサイン色紙を持つ
駒野友一選手
(画像引用:J's GOAL
http://www.jsgoal.jp/)

選手のサインは上の写真を見てのとおり、ちょっとやそっとでは読めるものではありません
岡田監督をもってして「私たちも誰のものか分からないサイン」と評するそれを、難なく当ててしまわれた皇后陛下のサッカーへの思いの大きさはもちろんのこと。
ここで敢えて駒野選手の名をお出しになったのは、プレッシャーの中で精いっぱい戦い、そして折れてしまった彼への労りとお心遣いから来るものに違いありません。

そして翌年、駒野は2014FIFAワールドカップ・アジア3次予選のタジキスタン戦において、代表初得点を含む1ゴール2アシストの活躍をみせてくれました。
彼のさらなる活躍には、これからも期待が高まるところです。

 

参考:読売新聞オンライン2010年6月30日01時41分、2010年7月9日13時40分
(http://www.yomiuri.co.jp/wcup/2010/news/japan_t/news/20100629-OYT1T01087.htm http://www.yomiuri.co.jp/wcup/2010/news/etc/news/20100709-OYT1T00630.htm )
OCNスポーツgooニュース
(http://sportsnews.blog.ocn.ne.jp/column/others101215_1_1.html)


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